カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


文・撮影/神畑重三((株)キョーリン)、水上司(アクアハンズカミハタ)、
山中幸利(神畑養魚(株)東京支店)



+++ Vol.4 +++
DANANBEKUAM湖の空の青さ、雲の白さ・・・・・・美しさに感動するとき

■湖を疾走するボートの前方に、マレーシアとの国境であるカプアス山脈が見える

2時間たってから急に視界が開けた地点にでた。DANANBEKUAMという湖に入ったのだ。なんとも素晴らしい景色である。北側にはカプアス山脈がそびえ立っている。ボートはもうマレーシアの国境近くまで来たらしい。

湖の一番深い所は50mもあるという。手を入れてみると暗褐色に見える。水は意外と透明度があり、驚く。湖面はまるで研ぎすました金属の鏡のようだ。空の青さ、雲の白さ、そして、ジャングルの木々の緑までそのまま映し出している。その美しさは、これまでの度重なるトラブルや苦労も一瞬に消し飛んでしまうほど感動的であった。3人でお互いに手を取り合って、「本当に来てよかったなぁ」と思うほど感激した。

しかし昼間でも広くて方向がわからないこの湖。夜間には方向を見失い、どこへ行ったらいいのかわからなくなってしまうそうだ。そして雨期には、ほとんどの動物は山岳地帯へ移動し、残っているのは蛇かテングザル、オランウータンぐらいだという。特に蛇は多く、木の上にトグロをまいているから注意が必要だ。


■有名人並の歓迎ぶりに思わずニコリ

ボートは鏡のような湖面を割りながら疾走し、進路を西にとり、とある島に接岸した。この湖には珍しい大きな島だ(山と呼ぶほうが正確かもしれない)。こんもりとお椀を伏せたような島で、BUKITTERKEDANGという名だ。周りは約2㎞ありそうで、麓には小さな漁村がある。

しかし驚いたことに、島の西側にしゃれたバンガロー風の建物が建築中だ。皆ちょっと狐にでもつままれたような気持ちになる。「まさかこんなところに別荘を建てる物好きはおるまい」などいいながら、百mほどの桟橋を渡って訪れてみると、原地民の大工らしい人が働いている。ここの責任者にいろいろと聞いてもらった。

この建物はいまだ知られざる秘境の植物、動物、魚類を調査、保護するために、アメリカとインドネシア政府が50%ずつ出資をして建てているという。世界自然保護機関(ちょっと訳が不正確かもしれないが)に所属し、完成後はアメリカの自然科学のドクターがひとり駐在することになっており、インドネシア川の分担金は、アロワナによって、政府に入った金で賄われるとのことであった。アロワナのサイテス許可取得に支払われるベラボウな負担金も結構な使い方をされているのだなぁと、私たちにとって気持ちが明るくなるニュースであった。

この船着き場の水深は、今は9mだが、乾期には0mになり、砂漠のように乾燥してしまうそうで、まったく信じられないような話であった。

狭い水没ジャングルの中を警笛を鳴らし全速力で


■ベースキャンプ地は、その名も「ミステリアス島」


ボートはいよいよ、私たちのベースキャンプ地となる島PALAMEIAYUに向かった。だが、途中方向がわからなくなり、仕方なく支流に戻り、再度湖に入って島を目指すことにした。

このミステリアス島(私たちがつけた名前)は、直径百mほどの中央に小高い丘のある小さな島である。 またこの島には、昔々この地方を統治した王がまつられており、丘の上にはお墓と庵がある。そして、莫大な財宝が埋められているという伝説があるそうだ。 


■ワイワイ、ガヤガヤ、島での食事を準備中

 

■饅採りの仕掛けの筒には、「ひかりクレストカーニバル」を。
水上氏、やるじゃない

乾期にはジャングルが深くてここまではとても近づけないし、この島に来れるのは雨期だけだという。そして、どういうわけか原地民はあまり近寄らないという。

チョン氏が声をひそめていった。「アヘンは一度水位の低い時にこの島に来たことがあるそうで、その時、島の南側に内部に通じる洞窟の入口を発見したそうだ。そして、その中には伝説の財宝がかくされているのかもしれないといっている。水位の高い時はその入口は2~3mの深さに沈んでしまうので誰も知らない。知っているのは自分だけなので是非とも今日は探してみたいといっている」。まさにインディージョンズの世界だ。早速、食事もそこそこにこのミステリーにチャレンジすることにした。

持参したウエットスーツとスノーケルを着用し、潜ってみる。水は褐色で、透明度はすこぶる悪い。そして、何よりも気味悪いのは温度差だ。上はまるでお湯のように温かく、1mも潜るとぞっとするような冷たさなのだ。

水上が二度三度トライする。やっと小さな入口を発見した。積んである石をくずせば多分中へ入れるだろうという。洞窟の中には空気があるのか、ガスの心配はないのか。いずれにしても私たちの装備では危険すぎると判断し、残念ながら中止することにした。

数年前、ヨーロッパの探検隊がこの湖のどこかで大きなダイヤを発見したという噂があるらしいが、この島、夜は幽霊が出るので、怖がって誰も夜は近づかないという。ウソか本当かわからないが、背の高い老人が現れて、知らぬ間にボートに乗っていたというのだ。


■島の丘の上にある伝説の王の墓




■隠された王の財宝探しに挑戦。水面下2mほどの所には誰も知らない入り口があるとか




■バデス・バデスの仲間?


出発前のひととき高鳴る思いを秘めて


■ひっそりと咲くミステリアスな花


 

今日の計画についてアヘン氏から説明を受ける。今夜はここから2時間ほどの所にある、イバン族(IBAN)の住むULN.BAYERという特別なテリトリーに行き、そこからカヌーで、D.LUARという世界で唯一のスーパーアロワナの生息地に案内してくれるという。そして帰りは遅くなり、あるいは湖の中で方向がわからなくなってボートの中で夜明かしするかもしれないし、雨も降ると思われるので雨具の用意をするように。今の内に充分休息しておいてくれということであった。

ここは赤道直下でもあり、日が照り出すとジリジリ肌が焦げるほど暑いので、皆、丘の上のあずま屋風の建物に入り、午睡をとることにした。ここから見る湖の景色も圧観である。見渡す限り、あっちこっちジャングルの頭が水面に顔を見せており、他では見られない風景である。


■凄まじいスコールが去った後、湖面は美しく輝く

しかし突如として天候は変る。湖面には白い波が立ち、突風が吹いてきた。 つかの間の午睡の休みを楽しみながら、寝転がってチョン氏からいろいろと興味のある話をしてもらった。お断りしておくが、私はインドネシア語は全然わからない。アヘン氏の話はすべてチョン氏が英訳して私に話してくれるのである。なにしろインドネシア語とチョン氏の母国語であるマレーシア語とは約80%共通であるというのだから、お互いよく理解し合えるのだ。インドネシアには長い間オランダ領であったため、英語の理解できる人は非常に少ないように思われる。

さて、その話というのは、この大湿地帯の北部に住む人喰い人種イバン族のことである。彼らは皮膚の色が赤く、今もって猿のような生活をしているという。非常に狂暴で、現在でも人肉を喰う習慣を持っているらしい。第二次世界大戦の時には敗走する日本兵が、気の毒にも彼らに相当襲われたという。

首狩りで男の技量や器量が試されたともいわれ、未亡人は生首がないと喪もあけないし、再婚を認められなかったそうで、イバン族=首狩族のイメージが定着している。従ってこの近くの原地民も恐がってここへは近寄りたがらないということだ。

プトシバブ(PUTUSSIBAU)の方角にあり、距離はここからそんなに遠くないが、雨期でも河は浅く、岩がゴロゴロしており、河を歩いて行くしか方法がなくて、丸一日くらいはかかるだろうということだ。アヘン氏だったら頼めば連れて行ってくれたかもしれないが、自分は御免だという。

何だかんだとたわいのない話をしている間に、日射も大分弱くなり、やっと雨もあがり、天候もよくなってきた。 さぁ、出発だ。出発前に、帰ってくる時のための目印になるように、私の持って来たカンテラを「無事帰ってこれますように」と祈りながら岩の上に安置し、島を離れた。異様な興奮と緊張感が、皆の顔の表情からビシビシ伝わってくるようだ。


■さすがに「ミステリアス島」。これは、夜中に火を吹いて「主人」の顔を浮び上がらせたという岩である




■夕日に佇む人、何を思うや?



次号へつづく

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