
text & phot/神畑重三((株)キョーリン)・大橋正嗣(神畑養魚(株))
+++ Vol.3 +++
高い透明度に小型魚
11月21日、一晩お世話になった客船を後に慌しく出発する。昨夜、大橋と日本から持参の餅やぜんざいなどで料理を作ったが、その時手伝ってくれた笑顔のかわいい女の子がドアの後ろに隠れるようにして、われわれの出発を名残惜しそうにじっといつまでも見送っているのが目に入り、いじらしかった。彼女、どうやら大橋に気があったようである。
![]() ■ビエンチャンの郊外。 |
水質は、ph7、GH2、KH2。獲物は、グラス・フィッシュ、バンディド・タイガー・ボティア、ニードル。ガー、ラスボラ・アントベニィ、小魚ばかりだが、魚種は豊富だった。
漁師と狙撃兵
![]() ![]() ■キンセンラスボラのレッドタイプ。 |
近くで、突然「パーン!」という乾いた銃声が聞こえてきた。「何事か!」とすっ飛んでいくと、高さ15mほどの細い木の上で幹に背を持たせかけて銃を構えている
男の姿が目に入った。高い木の上から下の沼の魚を銃で撃って漁をしているのだ。木の下では、パンツ一枚の若い男が待機している。彼は、撃ち取った魚を泳いで採ってくる役目らしい。何のことはない、猟犬ポインターの代わりをしているのだ。
目もくらむような高い木の上の、体を支えるものが何もない不安定な枝に立って銃を撃つのは、並大抵の技術ではない。この離れ業には、全く恐れ入ってしまった。こんなすごい狙撃兵を相手にジャングルで戦ったアメリカ兵は、たまったものではなかったろうと、同情してしまう。
珍魚と見えたのは巨大ヒル
11月21日、8時30分、今日はビエンチャン近郊の小川を探索することになった。1時間ほどメコン川沿いの道を走ってバン村に到着した。近くの漁師の1人ガイドをしてくれることになり、森の中の小川を次々とポイントを変えながら網引きをする。このあたりは、どういう訳かphが5、KH1と他と水質が異なる。沼の中に今まで見たこともない、ケシ粒のような昆虫を発見。朱色が気味悪いほど真っ赤で、どんな色素を持っているのか非常に興味があった
別の沼では、またあのピンクのスイレンの群生があり、葉の間から差し込む太陽光線でクリスタルガラスのように輝く水中には、鮮やかなグリーンの水草が茂り、それを縫うようにてラスボラ系魚が列を作って泳いでいる。
![]() ■珍魚かと思ったのは巨大なヒル |
とにかくラオスの川にはヒルが多い。大橋は、朝から3回も噛まれており「なぜ自分だけ噛まれるの?」とぼやいている。さすがにヒルの多い所だけあって、心得たもので、コンファーさんがそのあたりに生えている雑草の中から血止めの草<パイヤキウ>を探してきた。揉んで、傷口にそれを擦り込むと、血はピタリと止まってしまった。便利なものである。ヨーさんは、「このヒル、シンガポールへ輸出したら高く売れるよ。」と言う。漢方薬として珍重されるらしいのだ。
巨大ヒルを見てからは、誰も恐れをなして川へ入らなくなってしまった。しかたなく、村人に頼んで胸まで浸かって網引きをしてもらう。ここでは、大型の美しいラスボラが採れた。
ドラゴンファイヤー
![]() ■ニシクイガメ。 |
それは「ドラゴンファイヤー」という珍しいお祭りのことである。これは、奇妙な自然現象でそれがこのあたりの川で見られると言うのだ。この現象は1年に、たった1度だけ、11月10日の夕刻、7~9時に起きる。その時間になると、この川の中ほどから、一斉に10~20mもある水柱が次々と吹き上がってくるのだと言う。岸からそれらをカラフルにライトアップすると、まるで生きた龍が水中から天高く舞い上がっているように見えるそうだ。コンファーさんは、「たぶん、川底のガスが、水と共に吹き上がってくるのだ。」と説明してくれた。
![]() ■ホホジロクロガメ。 |