カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


文・撮影/神畑重三((株)キョーリン)、水上司(アクアハンズカミハタ)、山中幸利(神畑養魚(株)東京支店)

+++ Vol.7 +++
ミステリアスな島岩に老人の顔が浮かぶ!?

■ホッと一息、雲が美しいカプアス




■ベースキャンプ地の自炊風景



夜中にふと目が覚めると外は激しい雨だ。私たちのテントは2組張ってあり、私とチョン氏の共用なのだが、彼の姿が見えない。恐らく例のログハウスの中での口論にこだわっていて、中に入らず外で寝ているのだろうと思うが、この雨の中、アヘン氏や他の者たちはどうしているのか気掛かりだ。

風雨が強いらしい。岩場でゴツンゴツンとボートが岩に当たる音が聞こえる。丘の上に屋根のついた庵があるので、きっと彼らはそこで雨よけしているに違いないと思いながら、気掛かりながらも、そのまままた寝入ってしまった。

早朝、チョン氏のカン高い声で目が覚めた。ようやく天候も回復したようである。アヘン氏たちは火をおこして食事の用意をしている。日本の食糧は彼らも楽しみにしているらしい。湖の水で紅茶を入れるが、入れても入れなくても同じ色なのに苦笑する。

チョン氏だけはまだふくれ面のままだ。「皆心配しているから仲直りしようや」、私の方から手を出し、皆が喜んで手を叩いたので、チョン氏も仕方なく座ってくれた。万事OKだ。しかしハングリーはアングリーと同じなのだなとへんな理屈を考えたりした。

ようやく機嫌の直ったチョン氏が震えながらいうにはいうには、「昨夜噂どおりの老人の亡霊が出た。恐ろしくて岩の上でエアーマットをかぶって雨よけしながら寝てたが、一睡もできなかった。明け方になって雨でたき火の火が完全に消えてしまっているのに、そばの岩から青い火がボーと吹き出し、岩に老人の顔が浮かび上がったんだ」と、思い出しても恐ろしそうに話をしている。多分チョン氏の幻想だと思うが、おかしいやら、気の毒やら。でも本人はすこぶる真剣である。

私がどうして丘の上に雨やどりできる所があるのに行かなかったのかと聞くと、彼は「亡霊の出る所なんかとんでもない!!」という。驚いたことにアヘン氏たちも亡霊が怖くて丘へ上がらず、狭いボートの中で、身を寄せ合って座ったまま夜明かししたのだそうである。どうやら知らぬが仏で、テントの中でぐうすか寝ていたのは私たちだけらしい。それにしてもこの島には何か因縁のあるミステリアスな雰囲気がする。

初めて見る野生固体
深紅色のアジアアロワナ!!

食事をしていると、1隻の舟が私たちのテントを見つけて近寄ってきた。昨日私たちがガソリンを買った給油船である。この舟の主人から、昨日私たちが通過した村ではスーパーアロワナが3尾採れたとの貴重な情報を入手した。急きょその日はそこへ直行することにした。

村に着くと、早速村のポリス代行に私たちのビザを見せ、昨夜採ったアロワナの所へ案内してもらった。


■村人が見せてくれた野生のアロワナの仔魚

初めて見る野生のアロワナだ。色は赤いというより、深紅色をしていた。大きさは約12cmもある。聞けば1週間前に親の口から吐き出されたものだという。ヨークサックはついていない。野生のアロワナは、仔がヨークサックを吸収した後も約12cmまで口内保育を続けるという。自然の中では天敵が多く、ヨークサックを吸収したての6~8cmのサイズでは生存する確率が低いのであろう。少数産卵型のアロワナならではの習性である。1ヶ月間全く採れないことも珍しくないそうで、ここでもやはり絶滅寸前の貴重な生物であることを痛感させられた。

野生のアロワナを見ることができたし、手持ちの食糧も大分少なくなったので、予定どおり帰還することに決定する。

帰り道、また漁師の採った魚を見せてもらったりしながら、ボートは一路カプアスを南下する。シンタンに着いた頃は夕方、大分暗くなってからであった。少なくとも朝から8時間ほど乗っていたことになる。

シンタンからポンティアナまで、バスをチャーター、今後は車に乗って暗闇の道を一路南下する。約7時間、途中何の目的か知らないが、ポリスが同乗してくれたりしながら、ポンティアナに着いたのはもう真夜中の2時過ぎであった。相当なハードな一日だったが、よく耐えられたと自分自身に感心する。

カプアスの壮大な夕焼けに
想いをはせて……


■カプアスの壮大な美しい夕焼けを背景に佇む神畑氏

思えば、雨期の真っただ中、悪天候に悩まされた。いろいろなトラブルに遭い、一度は断念しかけたこともある今回の旅だが、常に力強い頼もしい私たちのスタッフ水上と山中、アヘン氏、チョン氏らに助けられ、目的を果たして無事帰って来られたのは本当に幸いであったとつくづく思っている。特にチョン氏とアヘン氏には世話になった。恐らく彼らの内一人欠けても、今回の旅は失敗に終わったと思う。改めて二人には感謝の言葉もないほど感謝している。

今、ペンを置こうとする私の心に再来するのは、あのカプアスの壮大な夕焼けや、文字どおり鏡のような湖面、そして月光に輝くアロワナの聖地MELAI湖などの素晴らしい大自然の風景であり、そしてまた、短い期間であったが苦楽を共にした素朴な現地の人々との温かい友情の交流である。

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