カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


文・撮影/神畑重三((株)キョーリン)、水上司(アクアハンズカミハタ)、
山中幸利(神畑養魚(株)東京支店)



一行は今度は野生のアロワナを求めて再びボルネオ島入りをした。
目指すはカプアス河源流。“龍魚”が住むのは、未踏の地のはず。
そんな奥地まで、今まで誰が足を踏み入れただろうか。
久しぶりのポンティアナ空港は熱帯地方とは思えぬ陰ウツな雨降りで、
気のせいか、今度の旅行の前途多難を暗示するようであった。


+++ Vol.1 +++

あせる気持ちをおさえてポンティアナへ

久しぶりのポンティアナ空港は熱帯地方とは思えぬ陰ウツな雨降りで、気のせいか、今度の旅行の前途多難を暗示するようだ。

実際、昨夕ジャカルタ空港に着いた時からトラブルの連続であった。入国カウンターでは運悪く新米の不慣れな管理官にあたり、私たちの列だけ遅々として進まず、1時間半もかかってしまった。

さらに税関では、「カメラの機材が多すぎる。税金を払うか、カメラを置いていくか、どちらかにせよ」という。昨年9月に訪れた時には何の問題もなく、今度も、「自分たちが使用するだけだ」と説明するが、「インドネシアの法律だ」といってとりつくシマもない。“袖の下”がなかば公然とまかりとおる国のこと、多分それが目的であろうことはわかってはいるが、釈然としない。


■アロワナの親魚を仕切りの奥へ呼び込む



■ライトで親魚の口中をチェックする


■親魚を水から引き上げ、口中をチェッックする



■これは非常に珍しい写真である。口内保育が始まると、このようにエラが変型する

なお頑張っていると、出迎えの友人のロー氏が、私たちが出て来るのがあまりにも遅いので心配して入って来てくれた。そして、彼らと話し合いをし、金を払ってくれてようやくOKとなる。彼らはニッコリ笑って「アリガトウー」。まったく頭にくるが、”郷に入らば郷に従え”か。

そしてまたトラブルが起こった。入国と同時にすぐ受け取る手はずにしてあったポリスビザも、まだ準備されていないことがわかった。仕方がないので、山中(神畑養魚社員)を奥地に入る前のポリスビザ取得のためジャカルタに残し、私たちは明朝一番の便でポンティアナに飛ぶことにする。

私たちは、翌日昼までにポンティアナに必ず着かなければならなかった。というのは、ヘン氏(アロワナ・ブリーダー)からの連絡では、彼らは私たちに、まだ誰にも見せたことのない”アロワナの仔取り”を見せてくれる約束で、私たちのためにその予定を一日ずらしてくれており、それも明日昼までが限界であるらしいからだ。それだけになんとしても午前中に着かねばならない。

一日3便あるポンティアナ行きはどれも満席である。オープン・チケットの私たちには、当然、席はない。おまけに悪天候で、予定時間より相当遅れるらしい。だが、背に腹は変えられず、また袖の下を使ってなんとか10時の便にもぐり込んだ。

機は空席ひとつなし。私たちのせいで乗れなかった人が、少なくとも3人はいたはず。申し訳ない気持ちでいっぱいだが、それよりもなんとか一年に一度限りの”仔取り”に間に合うように、イライラはつのるばかりである。そして、やっと雨のポンティアナ空港に着いた頃は、もう12時を過ぎていた。




■口を開かせてガボガボとゆさぶると、口中から仔魚がバラバラと出てくる


■背中の鱗はまるで金貨を張り付けたようで美しい



■吐き出させた仔魚を数えながら取り上げていく

出迎えのアヘン氏によると、ヘン氏の所の仔取りは私たちを待ちきれずに終わってしまったという。だが、もう1ヵ所のヒゲのブリーダー(ヘン氏の友人のアロワナ業者)の所がまだ間に合うかもしれないということで、カプアス湖のジャングルの入口近くの彼の養殖場へ、モーターボートで直行することになった。

しかし残念なことに、私たちが着いた時にはここもすでに終わってしまっており、自然保護局の役人がボートに乗って帰るところであった。皆、ガックリとする。しかし、「今回の旅の目的は神秘のアロワナ湖にチャレンジすることだ。頑張ろう」と、皆にハッパをかける。ホテルにチェックインした後、ヘン氏の自宅を訪れた。そこには今日、私たちが見せてもらえるはずであった仔取りしたアロワナの幼魚が、百尾以上も水槽で元気に泳いだり横たわったりしていた。今さらのように、もう半日早かったらと、つくづく後悔するが、済んだことはどうしようもない。ヘン氏も気の毒がって詫びてくれるが、誰の責任でもないのだ。

ここで、アロワナの話がいろいろ出たが、その中には興味深い話もあった。

ヘン氏の奥さんが今夕、養殖場で初めてアロワナの交尾を見たというのだ。夕方薄暗くなってから、2尾のアロワナが水面近くでお互いに体をからませながら激しく交わっていたという。そして、その光景は非常に神秘的で、厳粛な気持ちがしたと説明してくれた。今までアロワナの交尾を見た人はいない。多分彼女が初めてであろうという。

アロワナがどうやって交尾するのか全然わかっていないし、オス、メスの区別も、外見からは全然判別できないという。メスが卵を産んで雄が口中保育するというのが世間一般の常識としてとおっているが、メスの中にも口中保育するのがいるらしく、ますますわからなくなってしまうのだそうだ。


■親魚何尾から採ったものだろうか。まさに金の卵だ。



■ヨークサックがだんだん小さくなっていく。一人前になる日も近い。


■やっと自力で泳げるようになった仔魚たち。



■ヨークサックはもう完全に吸収された。

そして、私たちには信じられないことではあるが、アロワナは一生に一回しか産卵をしないという人が多いという。ヘン氏も自分の経験から、1回ではないかもしれないが、回数はそんなに多くないようだという。まったく、今なお神秘のベールに包まれたミステリアスなアロワナ。ますます好奇心が湧いてくる。


■スーパーレッド・アロワナの典型。生後約1ヵ月の固体。透き通ったきれいなヒレが特徴である。

次号に続く…

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