カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


text & phot/神畑重三((株)キョーリン)・大橋正嗣(神畑養魚(株))

+++ Vol.1 +++

素朴で親切で美人

■少女の頭の上にザリガニを置く筆者。

「ラオスの旅の印象は」と聞かれると、私は、「日本人とそっくりの顔の人が多いこと、人が素朴で親切なこと、そして、美人が多いこと」と答える。どこでも出会うことのできる、この国の人々の自然で暖かい笑顔に、私たちはすっかり魅了されてしまった。また、中部地方に美人が多いが、美人で有名なタイのチェンマイとほとんどここが同緯度にあるというのも何か関連性があるように思える。

さらに、この国の人の顔が日本人に似ているだけでなく、食事から生活の用具に至るまで日本とよく似ているのに驚かされてしまった。

仏教徒の社会主義国

面積は24万km2日本の本州と同じくらいの広さである。ここに約460万の人が住む。1954年にフランスの植民地から独立し、王政をひいていたが、75年に共和制へ移行、社会主義国となる。ベトナム戦争終了後、86年から市場経済制度を導入し、ASEANにも加入、現在は開放の道を歩みつつある。基本的には、社会主義国であるにも関わらず、国民の大多数が敬虔な仏教徒であるというのは、他に例がない。

今、この国と日本の間に直行便はない。われわれは、ビザ取得のこともあってシンガポール経由で入国することになり、そこでミスター・ヨーと合流した。今回の旅は、彼がラオスの森林大臣からこの国の水産漁業の視察を要請され、それに私も便乗させてもらうことになったのである。私のほか、神畑養魚(株)の大橋も同行することになった。


入国、微笑

シンガポールからシルクエアー625便、わずか2時間あまりの短いフライトで、首都ビエンチャンに着く。空港は、新しい滑走路やターミナルの建設工事が行われていて、どこもごった返している。日本のゼネコンの看板もあちらこちらに見かけられる。そんな中で、巨大なターミナルの屋根の緩やかなカーブは、お寺の屋根を連想させ、仏教国らしい。

通関は、非常に友好的で、東南アジアの国によくある、必要以上に厳しいチェックはなく、入国管理官までもがにこやかな微笑で迎えてくれた。この国が今なお社会主義国家であるのが信じられない。

■オスフロネームス・グーラミー Osphronemus goramy。

出発前、ラオスはカンボジアと同じように政情が不安定で治安も良くないのではないかと不安を持っていたが、とんだ取り越し苦労であったようだ。

今日の宿となるのは空港近くにある工事中のホテルである。フロントの女性やボーイがみんな両手を前に合わせてにこやかに微笑で迎えてくれるのは気持ちがいい。とりあえずフロントで両替。ヨーさんが100ドル交換を頼むと、でっかい弁当箱ほどもある大きな札束が両替されて帰ってきた。それを見て私は恐れをなし、50ドルだけ交換する。それでもポケットの入りきらないほど大きい。レートは、1ドルが1700kipであるが、高額紙幣が発行されていないので、こんなべらぼうな紙の量になってしまうのだ。

日本食に似たラオス料理

今回、われわれのガイドをしてくれるコンファーさんから昼食に招待される。彼は、政府直轄の貴金属貿易商で、水産大臣とは親戚であるとのこと。小柄だが、バイタリティーに満ちた40過ぎの人であった。

この国の代表的な建築様式の高級レストランでご馳走になったラオス料理の数々、野菜炒め、エビの天ぷら等々は、日本食に良く似ていた。ちょっと驚いたのは「のり」。味も日本のとよく似て、表面にゴマが振ってあり、パリパリとしておいしい。この国は、海に面していないので、淡水産の水草「ヘアグラス」のようなものを固めて乾燥させて作るらしい。

ご飯は、白と赤の2種類あり、赤いのはステッキ-ライスと呼ばれていて、日本のもち米とそっくりである。それが柔らかい竹筒に入れて蒸され、皮をむいて食べる。お皿に盛られたご飯の食べ方だが、ここの人は箸を使わず、器用に3本の指でこねて団子を作って食べる。コンファーさんは、「インドネシアやインドの人も同じように指を使うが、彼らは5本の指でぐちゃぐちゃこねまわして食べ、あまり品が良くない。私たちラオス人は、3本指だけで品よく食べる。」とちょっと自慢げである。

語学堪能な運転手

コンファーさんの店の従業員の方が2名が同席していた。彼らが、翌日からわれわれの車の運転をしてくれると言う。驚いたことに、彼らは皆、フランス語、ロシア語が堪能なのである。ロシア語は「モスクワ大学に4年間留学していたときに覚えた」という。英語は、独学らしく十分ではないが、それにしても、苦労して身に付けた学問を生かせる仕事のつけないのが、ちょっと気の毒に思われる。ちなみに給料を聞いてみて、2度びっくり。1ヶ月3500円、つまり46000kipだと言う。


■サルビニア・ククラータ Salvinia Cucullata。

■グラスフィッシュ

ベトナム戦争と国民気質

私がコンファーさんに「この国の人々は、皆親切で穏やかで、とても社会主義国の人とは思えない」と率直な意見を述べると、彼は「ベトナム戦争の時、ベトコンが国境を越えてわれわれの国のも逃げ込んできた。それを攻撃するためにアメリカ軍がラオス国内にも無数の爆弾を落とした。戦後アメリカは、わが国を一方的に共産国にした。しかし、われわれは昔から熱心な仏教信徒で、人々の気質は何も変わっていない。」と言う。

そんな話をしていると、隣のラオス人とフランス人らしいグループから上等のワインが1本差し入れられた。「失礼ですが、せかっくこの国にいらっしゃったからには、この国のワインを楽しんでください。」といううれしい申し入れだ。見知らぬ人の温かい心遣いに、心和む、楽しい昼飯であった。

農林水産省訪問

朝食後、アクアカルチャーフォレストアンドインイリギュレーション(農林水産省)を訪問する。大臣が出張中だったので、局長がわれわれの応対をしてくれた。局長の話では、「ラオスの魚はほとんどメコン系で、新種の発見は難しい」とのこと。ちょっとガッカリさせられてしまう。

この国で養殖されているのは、ほとんど食用魚である。観賞用に魚が売れるということは思いもしなかったようだ。

「南部の国境近くのメコンの滝の下に淡水イルカが住んでいる。政府で許可を出すからよかったら買ってください。」と言われた。

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