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KAMIHATA探検隊


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text & phot/神畑重三 協力/神畑養魚(株)

+++ Vol.6 +++


「ハードな旅になることは予測されていた・・・。」

コロンビアはコカインの密輸でも悪名が高く、治安の悪さも世界一だといわれている。

それだけに出発前から身の引き締まる緊迫感を覚えた。

当初からハードな旅になることは予測されていた・・・。



吠えながら嗅ぎまわる麻薬犬

ワイルド・グッピー

■ワイルド・グッピー

グリーン・ナイフフィッシュ

■グリーン・ナイフフィッシュ

シルバー・ハチェット

■シルバー・ハチェット

マーブルハイドロシナスガー

■マーブルハイドロシナスガー

この国ともお別れで、いよいよマイアミに発つ日だ。迎えのラファエロのポンコツ車は中からドアを閉めたら最後、外から開けてもらわないと出られない。あげくに、ラジエーターの水が絶えずもれるので、水を満タンにしたポリ缶が用意されている。安全を期して早めに飛行場に向かったが、われわれが空港で受けた税関のチェックの厳しさは想像を絶するものだった。

空港ロビーは何百人もの人の波でごった返していたが、その中を放し飼いされた麻薬犬のジャーマン・シェパードが「ウォン、ウォン!」と吠えながら、ところきらわず、わがもの顔に走り回り、出発客の臭いを嗅ぎまわっている。われわれの荷物も衆人監視のもとですべて開けられ、ことごとく調べられた。その間もシェパードがわれわれをクンクンかぎまわっている。いくら犬好きの私でも気味の悪いことおびただしい。ジャングルで食べ残した缶詰までいちいちかがせている。

「ホテルはどこで、何時に荷物を詰めたか、荷造りのそばに誰かいたか」と、まるで刑事の尋問そのままの厳しさだ。山中が「プライバシーの侵害だ」といきまくが、合計2回の荷物チェックと2回のボディチェックを受けた。費やした時間はゆうに2時間半。いつもどおりの搭乗のつもりで1時間前くらいに来ようものなら、たぶん搭乗できなかったと思う。

チェックの厳しさは、われわれが当地でほとんど見かけない日本人であったことに加えて、ジャングルでのテント生活一式の装備を所持していたことが麻薬の関係者とみなされたらしいのだ。また、熱帯魚の輸送はとくに厳しいチェックがある。というのは、一部の不心得な輸出業者が熱帯魚輸出を隠れ蓑にして、マイアミにコカインを輸出しているという噂があるからで、ラファエロの話では、税関で大型ナマズの腹を割いてコカインが入っていないかどうかを確認することもあるそうだ。熱帯魚を扱う業者としては、本当に情けなく、憤懣やるかたない心情になる。

ラファエロはもっと冷めた見方をしている。コロンビアのポリスは麻薬摘発のためのみの存在で、治安やゲリラ対策に向けては、からっきし無力だという。彼らがコカインのチェックを厳しく行うのは金儲けが目的で、所持者を見つけたら、ポリス一人につき百ドル程度の袖の下で片付くとのこと。署でのチェックで引っかかれば、相場は2千ドル、国の司法機関に告訴されても日本円の何十万円かを支払えば合法的に無罪放免となるという。取締りの厳しさは「職務に忠実なのではなく、金儲けに熱心なだけだ」とラファエロが苦笑いした。万事が日本人の常識の範囲を越えた物の考え方で、ただただあぜんとするだけだった。

ラファエロとはドイツで開催されるインターズーでの再会を約束して別れたが、別れ際に彼が「機内では食欲がなくても必ず食事を取り、飲み物も飲むこと。でないと、腹の中にコカインの袋を飲み込んでいる疑いがかけられ、パーサーから地上に不審な乗客としてリストアップされて報告される」というショッキングなアドバイスをくれた。

食欲はなかったけれど、われわれ2人が無理して機内食を詰め込んだのは言うまでもない。ところが、マイアミ税関は拍子抜けするほど簡単に通してくれた。アメリカでは日本人はほとんどフリーパスらしい。

危険な目に遭い、めったに体験できない数多くの貴重な体験をさせてもらい、収穫も少なくなかったが、無事帰国できたことはただただ運が良かったからだ、と思わざるをえない。正直言って、あの国には二度と行きたくないと思っている。

次回「ガイアナ編」をお楽しみに!

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