カミハタ養魚グループは人と生き物が共に暮らす環境をトータルに提案します

KAMIHATA探検隊


写真・文◎神畑重三、松本 亮、犬塚 一、 協力◎神畑養魚(株)


+++ Vol.4 +++
ボルネオカリマンタン採集紀行

8月10日(土)7日目

■グラスフィッシュの一種。写真ではわかりにくいが、尾ビレが赤い

■デルモゲニーは意外とどこにでもいる

■淡水ウシノシタ

朝食には松本も出てきて少し食物に手を出している。やっと回復したらしい。さて、これからどうするかということになったが、ジョンの顔を見ているとニコニコして何かいいことがありそうだ。案の定、「グッドニュース、このシマヤグ湖のイルカが2頭ジャカルタの水族館にいるらしい。そこでイルカが見られる」と言う。「それならジャカルタに行って早く見よう」ということに衆議一決。すぐホテルをチェックアウトしてバリックパパンまで行くことになった。直線で約250キロほどの距離である。途中テンガロン・ムラワルマン博物館に立ち寄る(Tenggarong Mulawarman)。

インドネシア最古のヒンドゥ朝、ムラワルマン朝の発祥の地であり、インドネシア人の彼らはここに特別の思い入れがあるようで、彼らは熱心に説明を聞いていた。ただ私には、地下にある元や明朝の時代の陶磁器の類が素晴らしく、目を楽しませてくれたのが思わぬ拾い物であった。

また近くの小川で採集するが変り映えなく、ただ、カモンバの変わった種類が見つかったのが収穫であった。どこからともかく見知らぬ男が一人、我々のところにやってきた。「ワニを見せる」という。「ワニなんかどこにでも居るし、珍しくないから」と断ると「人喰いワニだ」と言う。大して時間も掛からないので、その男の案内を受けることにした。「料金はいらない」というのも気に入った。工場のような建物の裏にとてつもなく大きいワニの剥製が2頭陳列してあった。処理が悪いのか少し臭い。長さは4メートル40センチもある。「昨年の11月にこのマハカム河で捕れ、腹を割くと人体が出てきた」のだという。「人喰いワニ」である。そうしていると「もう一軒ワニを置いてあるから見に行こう。今度のは生きているのだ」という。すぐ近くの農家に招き入れられる。なんと部屋の中にでんと3メートル以上もあるワニ(マレーガビアルという種類)が寝そべっている。そして薄目を開けてじろりと侵入者である我々を眺めている。ワニと我々の間には柵も何もないのだ。

◆人喰いワニ!?◆

■人喰いワニの剥製とともに。しかしこのワニの腹に中に人が入っていたと思うとゾッとする

思わず後ずさりして「ウヘー」と声を上げていると、この家の主人が「このワニ、小さいときから家族と一緒に育てられて人間慣れしているから大丈夫。背中を撫でてやってくれ」と言う。そこらの壁にはそれを証明するように子供がワニの背中に乗った写真なんかが貼られている。まず、クゥオさんがチャレンジすることになった。この人は日本の動物王国のムツゴロウさんみたいな人で、蛇でも猿でもすぐ仲良しになって手なずけてしまう。奇妙な特技を持った人なのである。事実、クゥオさんに背中を撫でてもらうと「ワニ君」気持ちよさそうに目をつぶっているではないか。次に私がチャレンジすることになった。こわごわそばへ寄って背中を触ると、とたんにジロリとこちらへ横目を使う。慌てて、すっとんで逃げる。ワニも犬みたいに好きな人、いやな人を見分けるみたいである。

夕方にバリックパパンに着く。しかし、残念ながらジャカルタ行きはもうなく翌朝一番のフライトを予約する。町へ入ってブルースカイホテルに泊まる。なかなか良いホテルである。夕食前、ホテルのプールで泳いでボルネオ最後の日を楽しむことのなった。松本も元気になって泳いでいる。たびも終わりに近づき、ともかく全員無事に帰り着くことができ、何より嬉しい。

夕食は1週間ぶりの中華料理である。それにしても、このバリックパパンという町は、なんと美人が多いことか。レストランのウェイトレスにしろ、隣のテーブルの女性の一団にしろ、超美人ぞろいである。半端ではない。独身者のバウーは料理には手も付けす、ため息混じりで眺めている。彼に言わせると、自分の好み100%の女性ばかりだそうである。彼女たちの肌の色は抜けるように白く、小柄ですらりとしており、顔立ちはエレガントそのもの。ジョンに言わせると、ここ、バリックパパンは美人女性の産地としてインドネシアでも有名なのだそうである。中国系とオランダ系の血が混じっているらしく、肌の白いのはここの水が良いせいだと言っていた。

空港でドライバーたちと別れる。彼らはこれからまた、彼らはこれからまた、バンジャラマシンまで長いドライブをするのだ。日本人のは考えられないほどタフな男で、1500キロ以上の長い道のりを、それも平坦な道は少なく、危険な山や狭い道をよくまぁ無事に最後まで届けてくれたものと心から感謝する。二人に感謝の気持ちを込めて心ばかりのチップを渡すと、本当に嬉しそうににっこりと受け取ってくれた。何事も出会いがあれば、別れがある、とわかっているが、別れはいつも一抹の淋しさを覚える。もう2度と出会うことはないであろう彼らと硬く握手をして別れた。

カワイルカたちとの出会い

■シマヤグ湖では見られなかったが、念願叶い現地の水族館でカワイルカたちと出会った

ジャカルタに着くとすぐ水族館へ車を飛ばす。水族館の入り口には呼び物の淡水イルカの絵がかかっている。なるほど頭がまん丸でくちばしもなく、今まで見たこともないイルカの絵である。これが、あのシマヤグ湖から来た淡水イルカか、と胸が高鳴ってくる。さっそく、切符を買って館内に入るが、どうしたことか、誰もいない。係りの人が横に手を握っている。次のショーまであと2時間あるという。がっかりしてしまう。我々にはそれを待つだけの時間がないのだ。なんとか交渉してくれるようにクゥオさんが頼みに事務所にいく。係りの人に「この日本人たちは、今、このイルカが棲んでいたシマヤグ湖から帰ったばかりだ。湖では残念ながら彼らを見ることができなかった。なんとか特別便宜を」。クゥオさんの頼みを気持ちよく理解してくれ、特別に見せてくれることになったのは本当に幸運であった。ここで飼育されているのは、それぞれ体長2メートルちょっとのオス「ガバラ」とメス「サブル」という名の2匹であった。よく人慣れしており、大きく口を開けた表情はまるで人間が笑っている顔そっくりである。頭を撫でてやると、じっとしているが、何とも奇妙な感触である。ぬるっとしてざらざらしているし、硬そうだが手触りは柔らかい。松本がさっそく水質をチェック。ph5.0、酸性である。試しに指をつけて舐めたが、完全な真水であった。南米のオリノコ河のイルカは180度頭が回転するが、ここのは人間のように顎が上下するだけである。本当に変わっている。帰国後このイルカの写真を姫路水族館の館長を通じて東京大学に送って鑑定していただいたが、この種類はマイルカ科なのか、イッカク科なのか、未だにはっきりしないのだそうで、意見が2つに分かれているということであった。いずれにしろ、現地のこのイルカ達はインドネシアの法律で捕獲が禁止されており、また現地の漁師たちもアマゾンのインディオと同じように神格化して大切にされているが、いつまでも環境を壊すことなく、貴重なイルカ達を大切に保存したいと思うのは私たちだけではあるまい。人類の貴重な財産でもあるのだ。

カワゴンドウ
Orcaella brevirostris
Phocoena(Orca) brevirostris OWEN,1866
Orcella fluminalis ANDESON,1871

英名 Irrawaddy Dolphin

異名 イラワジイルカ

特徴 頭がまるく、嘴はなく、口辺が上下に少し高くなっている。このような形態はマゴンドウの仲間に多く見られるが、このような形態で、7個の頚椎骨の内の最初の2個しか融合していないことは、きわめて特徴的である。

体長 2.1メートル前後

習性 普通は2~3頭の小群れをなしていて、1頭でいることは比較的めずらしい。水面近くでロールするように泳ぎ、全身を空中に出すことはほとんどない。普段は海水の塩分の影響の少ないところに生息しているが、川の氾濫したときや大雨で水流が強いときなどには、海に出ることもあると思われる。河口から1300キロもの上流に生息していることもある。海で見かけることはほとんどない。

食性 ほとんど魚類に限られるらしい。

分布 ベンガル湾沿岸部、インドネシア沿岸部、ボルネオ沿岸部及びガンジス川、プラマプトラ川、イラワジ川、マハカム川等に分布する。インドのマドラス地方にあるVizagapatam港や、タイのChantaban海岸でも捕獲された例がある。MORRISON SCOTTO&ELLERMAN 1951によると、ジャワ、ワラッカ海峡、マライ半島東岸にも分布しているという。

現地の漁民などはこのイルカをアマゾンなどと同じように神格化している。しかし、すでに日本の水族館が目をつけており、希少生物保護上の問題もあり、できるだけそっとしておいてほしいもである。

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